「制限」が創造性を高める理由 « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム

人間の創造性に関してはたくさんのパラドックスがあるが、そのなかのひとつは、制限があるほど創造性が高まるらしいということだろう。
われわれは、想像力は完全に自由な状態を必要とすると思いがちだが、実際の創造的プロセスは、厳密な約束事や形式上の条件と深く絡み合ったものなのだ。
障害物を与えられた被験者たちのほうが、大局的な視覚的ターゲットへの反応が有意に優れていた。すなわち彼らは、細かい部分よりも、全体に注意を向けていた。
また、障害物は知覚的な視野を広げるだけでなく、概念的な視野も広げる。
事前に障害物のある状況に置かれた被験者は、そうでない被験者に比べて、遠隔性連想問題の正答率が40%高かった。障害物があることで、彼らはより創造的な心理的状態に向かったのだ。
効率性を重視すると、創造性が犠牲になる。われわれは通常、散文的に考えており、象徴的で詩的な思考は行っていない。そして、予期せぬ障害物、簡単には乗り越えられないハードルに行き当たって初めて、認知の連鎖がゆるめられる。それによって、無意識の中にかすかに光る、普通では考えつかないつながりに至る新たな道を発見することが可能になるのだ。
ポール・ヴァレリーが言っていたように、「芸術が固有に備える制限によって、その想像が鈍ってしまうのではなく刺激される時、人は詩人となる」。彼らは、束縛に進んで入りこむことによって、拘束を超えているのだ。